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生物の分野で (かぶ)と言えば、二通りある。一つは、植物において、束になった姿のことを指す。もう一つは、微生物やそれに類する培養によって維持されるものの、同一系統のものを表す言葉である。

植物の場合 植物の場合の株(stock)というのは、普通は草本において、根元で枝分かれした茎が多数束になっているようなものを指す。あるいはその状態を株立ちと呼ぶ。 例えばチューリップのような植物は一本の花茎とそれを取り巻く葉が出るだけである。しかし、ススキの場合は、茎の根元から側面に根を出して立ち上がり、その根元からは根が出る。それを繰り返す結果、多数の茎が根元で集まった状態になる。このように多数の茎が一つの根元によった状態を株と言う。茎の根元から側面に新芽を出すのは、草本ではごく普通に見られるものであるから、このような姿になる植物は多い。 茎の側面から出る枝が長く地を這ってから根を下ろし、そこから芽を出す場合もある。このような這う茎を匍匐茎(あるいは匍匐枝)という。根元からすぐに芽を出さず、匍匐茎のみを出すものでは、単独の茎があちこちにバラバラと並ぶ姿になるので、株立ちにはならない。根元からも芽を出して株立ちになりながらも、匍匐茎を出すものもある。 植物では個体の定義が難しいが、根を持った茎を一つの個体と見ることもできる。その場合、側面から出た新しい茎は新しい個体であるので、これは無性生殖のひとつ、栄養生殖の一つの型と見ることができる。事実、多くの栽培植物ではこのようにして生じた新しい茎を切り取って植え替えることで繁殖が行われる。この方法を株分けと言う。理屈の上では茎一本毎に分けることもできるが、たいていは弱くなるので、ある程度の固まりに分ける。 実際、ある程度株が大ききならないと花が咲かないなど、株全体をもって一個体として機能していると考えた方がよい面もある。シュンラン属のものなどは、葉の着いていない肥大した茎だけが何年分も残っているが、これは栄養分を貯蔵する役割を担っていたり、根は生きていたりするので、ちゃんと役に立っている。 日本語としての には、このほかに樹木を切った後の根元の意味があるが、現在では普通は切り株と呼ぶ。屋久杉の切り株にウィルソン株というのがある。

微生物学等の場合 微生物など、維持のために培養が行われる生物などにおいても株(strain)という言葉が使われる。培養株という語もよく聞く。分離したもの、との意味で分離株(isolate)という語もある。 例えば細菌類や菌類を研究する場合、まず野外から試料を取り、これを適当な方法で培養し、そこから出現するさまざまな微生物の中から目指すものを取り出す。つまり純粋培養を行うわけだが、その際、取り出された微生物を、まず適当な培地、たいていは寒天培地の上にくっつける。これを植え付けると表現することも多い。そしてその微生物がそこでよく育つと、やがてシャーレの中一杯になって、栄養も使い尽くして死んでしまう。それでは困るので、そうなる前に、コロニーの一部を切り取って新しい培地に置いてやる(継代培養、植え継ぐと表現することも多い)。これを繰り返すことで、その微生物を手元に置き続けられる。 したがって、その場合の研究対象の微生物は単独の個体を区別することはできず、このように植え継ぎによって維持する系統をその対象とせざるを得ない。そのような系統のことを株と呼ぶ。恐らく植え込み、大きく育つと切り離しては植え継ぐ、という操作からの連想であろう。英語ではstrainで、これには植物の株の意味はなく、家系を意味する言葉である。なお、野外サンプルから微生物を捕りだして培養する場合、まず分離(isolation)という操作が必須である。したがってこれによって得られた株のことをisolateという場合もある。 当初は培養した微生物の系統を意味する語であったが、培養という手法がさまざまな資産運用 に適用されるにつれ、この言葉も範囲を広げた。細胞培養においては、不死化によって半永久的な継代培養が可能になった培養細胞を、株(細胞株あるいは株化細胞、cell line)と呼ぶ。さらには、高等植物の生長点培養によって繁殖させたものをも株と呼ぶ例がある。云わば逆輸入である。 同一の株は細胞分裂の繰り返しによって継承されるものであるから、基本的には同一細胞からのクローンであり、遺伝的には同質の集団であると考えられる。細胞学などの分野においてはそのような点で共通の素材があった方が統一した研究ができるから、実験材料として多数の培養株がそれぞれに固有の名をつけて扱われている。その他、一般には野外から分離したものを野性株、特に変異を表したものを変異株、あるいは栄養要求株などと言ったふうに用いる。 ただし、培養中に新たな変異を生じる場合もある。そこから新しい発見がある場合もあるが、一般にはせっかく確立した株であるから、変異を起こさない方が望ましい。そのため、現在では低温などの細胞が活動していない状態での保存が行われている。また、さまざまな微生物や培養細胞などの株を収集保存し、研究や教育、産業上の理由などで必要とする者に配布する機関もある。これらの機関は、植物の系統を種子の形で保存するシードバンクなどとともに、ジーンバンクあるいはセルバンク(遺伝子や細胞の銀行)と呼ばれることがある。

無性生殖(むせいせいしょく)とは、生殖の方法のひとつで、1つの個体が単独で新しい個体を形成する方法である。作られた生殖細胞が単独で新個体となる場合にこう呼ばれる。

一般的なあり方 無性生殖と言われる生殖は、親の体の一部が独立して新個体になるなど、単独の個体が新しい個体を生むやり方である。生殖細胞が、他の細胞と融合する事なく、単独で発生や発芽を始める場合もこれである。一方、進化生物学では、遺伝的組み換えなしにクローンの子孫を作ることを無性生殖という。この場合、生殖細胞が単独で発生したとしても組み替えがあれば、無性生殖とは言えないので注意を要する。 第一の定義から言って、最も単純に無性生殖と見なしやすいのは分裂である。単細胞生物の多くが細胞分裂によって個体を増やす。多細胞生物の場合、その体が大きく二つに割れて数を増やす場合をこう呼ぶ。 個人向け国債 が当初は小さな形で作られ、次第に大きくなって独立する場合を出芽という。 他に、単細胞ないし少数細胞からなる散布体を胞子とよぶ。胞子に鞭毛があって運動する場合は遊走子といわれる。 高等植物などに見られる、芽が独立してむかごとなったり、匍匐茎から新しい株を作るなど、栄養体の変形が繁殖に用いられるものを栄養生殖と呼ぶ。コケ植物や地衣類で、栄養体のごく一部が独立して小さな散布体となったものは芽子とよばれる。 また、有性生殖の結果で生じるはずの接合子を単独個体が作ってしまう単為生殖も、場合によっては実質的に無性生殖と見なせる。

有性生殖とのかかわりにおいて 有性生殖は細胞の融合によって新しい個体を作る。このことは、新しい遺伝子の組み合わせを生じることを生み出す。これに対して無性生殖では、体細胞分裂を基本として新しい個体を生み出す。したがって、それによって生じる新個体は、完全に親と同じ遺伝情報を持つもの、すなわちクローンである。 このことは、親と同じ性質を持つ子が得られることである。この場合、親が子を作るまで生存していたのが確かであるから、少なくともそれだけの生存能力を保持する子が得られる訳であり、一定の成功が保証されているとも言える。また、有性生殖より手順が簡単なので、素早い個体数増加が確保できる。ただし、環境条件が変わればこの限りではなく、その個体の性質上は不利な条件が生じた場合、最悪の場合、全個体が死亡する危険がある。 他方、有性生殖では遺伝的多様性が得られるので、環境の変化にも対応できる個体が得られる可能性がある。また、遺伝的多様性は進化の上でも重要であり、大部分の生物は生活環の上のどこかでなんらかの有性生殖を行う。むしろ、ヒトなどのように、有性生殖しか行わないものもある。 そのような意味で、環境条件がよい場合に無性生殖で増殖し、有性生殖で生じた生殖細胞が休眠するミズカビ類や、単為生殖で増加し、有性生殖で休眠卵を生じるミジンコなどは理にかなっている。

胞子にまつわる混乱 胞子形成は、無性生殖の一つと見なされる。胞子が単独で発芽し、新個体を形成するためである。ただし、形成過程から考えると、大きく二つの場合がある。一つは体細胞分裂によって形成される胞子である。ケカビなど接合菌の胞子のう胞子、アオカビなど不完全菌の分生子、ミズカビ類の遊走子などがこの例である。この場合、その胞子の発芽によって生じる新個体は、親と同じ遺伝形質を持つ。 もう一つは、減数分裂によって形成されるもので、シダ植物・コケ植物・種子植物や、さまざまな藻類、変形菌などがそのような胞子を形成する。かつてはこのような胞子を真性胞子と呼んで区別したこともある。 これらの生物では胞子を形成する体は核相が複相、すなわち2nであり、減数分裂によって生じる胞子は単相(n)である。胞子が単独で発芽すれば、それによって生じる体はやはり単相(n)となる。普通、この単相の体は配偶子を形成し、それらが接合して複相の体に発達する、いわゆる世代交代が見られる。そこで、複相の体を配偶体、単相の体を胞子体と呼ぶ。そして、配偶体は配偶子を作るのでこれを有性世代、胞子体は胞子を作るので無性世代とも呼ばれる。 これらの胞子は確かに単独で発芽し、その限りでは無性生殖的なのであるが、それによって生じる体は胞子を形成する体とは異なったものである。分裂や出芽を無性生殖とするならば、これらをそれと同等に扱うことはできない。むしろ接合と減数分裂によって構成される有性生殖環の一部と考えるべきである。近年は無性世代という呼び方もしない場合が多い。 ほかに子のう菌類の子のう胞子、担子菌類の担子胞子なども減数分裂によって形成されるipo 。しかし、これが無性生殖と言われることはなく、菌類学では伝統的に有性生殖として扱われた。